はじめに
2024年春、人生で初めて自分のお金で買った車が トヨタ・ヤリスZ 6MT。
頭金なしのローンで迎え入れてから、1年5か月で 走行距離11,000km に到達しました。
免許は大学時代に取得し、その頃にレンタカーで軽トラを運転したりはしましたが、
「自分の車としてMTを所有する」のはこのヤリスが初めて です。
なぜMTヤリスを選んだのか?
小さいころから親がシトロエン2CVに乗っていた影響で、MT車はどこか憧れの存在でした。親がいない間にクラッチやシフトを触って遊んでいた記憶もあって、操作すること自体が「特別なもの」として刷り込まれていたのだと思います。
学生時代は実家が金銭的に厳しく、免許取得は「社会人になってから」と言われていたため、周囲の友人たちが車を買って乗り回す中、自分は置いてけぼりでした。ようやく取得した免許で初めて触れたMT車がカローラアクシオ。そのときに「車と対話しているような感覚」を強く覚え、MT車への思いはさらに膨らみました。
ここまでで「MTを欲しい」と思った理由を振り返ると:
- 子どものころからMT車に触れてきた体験と憧れ
- 周囲より遅れて免許を取ったことでの強い執着
- 教習車(アクシオMT)で感じた“直結感”
- 「いつかは自分のMT車を」と誓った気持ち
といった流れが積み重なっていました。
その後、東京に行ってからは現実的にATカーシェアばかり。MT車はエニカで1日1万8000円とプレミア価格で、仕方なくタイムズの古いフィット(2000円/日)を借りて遊んでいました。MTの世界はずっと遠いまま。それでも「いつか必ず」と思い続けていたわけです。
そして地元に戻り転職した後、高校時代の友人でトヨタ営業マンになっていた人から「車を見に来ないか」と誘われました。当初は角ばったセダンのカローラアクシオを希望しましたがすでに生産終了。その代わりに勧められたのがヤリスZ 6MTでした。
- 本当はセダン+MTが理想だった
- ただし現実にはアクシオ終了で選べない
- 友人営業マンがヤリスZの見積もりを準備済み
- その場の勢いと「まぁこれならアリか」で契約
こうして2024年4月、ついに人生で初めて自分の資金で購入した車が納車されたのです。
走りと操作感
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クラッチとペダルフィール
納車したての頃は、クラッチのストロークや踏み加減に奥行きがあるように感じました。ATのレンタカーに乗っていた頃は座席を比較的後ろに下げて常にリラックスモードで運転していましたが、MTヤリスではクラッチをしっかり踏み込むために、常にシートをタイトに前へ引き出す必要があります。ただ、慣れてしまえば違和感はなくなり、今では自然に扱えています。 -
シフト操作
これまで軽トラの「ぐにゃぐにゃ」したMTを数回触った程度の感覚しかありませんでしたが、ヤリスに乗り換えて感じたのはストロークのコクコク感。どのギアにもスムーズに入り、旧車にありがちな「1速が入りにくい」といった不便も一切ありません。
ただ、シフトパターンがこれまでの安い車にありがちだった5速MTではなくGR86やGRヤリスなどと同系統のカプラで持ち上げて操作する6速MTシフトとなっています。MT現役世代だった親世代の親戚から車を見られることは多々あるものの、「おいおい、坂道で1速入れる奴がいるか?」と注意されたこともあるが、MTヤリスはRと1速が逆になっているので、1速入れてないんですわぁ…R入れてるんですよこれがぁ…とネタ話に持ち込むこともできる。 -
エンジンパワーとフィーリング
エンジンは日常走行から高速道路の追い越しまで十分に余裕があります。AT、CVTと比べればMTは操作感・加速感ともに雲泥の差で、リニアな反応は電気自動車にも劣らない印象です。3気筒で「うるさい」とレビューされることもありますが、私にとってはむしろありがたい存在。エンジン音こそ「走っている実感」を与えてくれますし、幼少期から2CVの2気筒エンジンに慣れ親しんできたので全く違和感はありません。 -
空ぶかしができる!!!!!
ATヤリス(CVTやハイブリッド、ヤリスクロス)では空ぶかしができません。PやNでアクセルを踏むと「ピーーーーー」と警告音が鳴り、「アクセルから足を離してください」とメーターに注意が出る仕組みで、エンジンを吹かすこと自体が禁止されています。
しかしMTヤリスなら、そんな電子的なお説教は一切なし。クラッチを切れば、(或いはN状態で)自由にガンガン空ぶかしができちゃいます。昔のAT車では、エンジン始動後にまずNレンジで回転数を上げ、「この車は何CCのエンジンで、どんな音なのか」を確かめるのが半ば儀式のように行われていました。ところが現代のクルマは環境や騒音規制もあってか、そうした行為を完全に封じ込めているのです。(実際にHVヤリスをレンタルして試したところ、やはり一切吹かせませんでした)
だからこそ、MTヤリスで久々に「素のエンジン音」を味わえたときの感動は大きいものがあります。CVTヤリスに乗っている友人を助手席に乗せて試してみたら、「か…空ぶかしできるじゃん!壊れてるのかと思ったw」と驚きつつも、素直にエンジンの鼓動を音で感じ取って感動していました。
走り出さなくても「クルマと対話できる」瞬間があるのは、MTならではの楽しさ。今の時代では逆に貴重な体験になりつつあります。
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バック時に唸る!!!!!
MTヤリスは、軽トラや昔の商用車と同じく**バック専用のギア(ストレートカット/ヘリカルギア)**が使われています。そのため、Rレンジに入れてバックすると、エンジン音に混じって「ぅうぃぃいいいいいん……」という独特の唸り音が響きます。まるで古いダイナモや発電機を無理やり回しているような、あの“機械が動いている感”がダイレクトに伝わってきます。 ATヤリスではほとんど無音で、エンジン音だけを背景に静かに後退していきますが、MTでは違います。駐車場でRに入れると「おっ、今バックしてるな」と誰が聞いても分かるくらいの圧倒的存在感。人によっては「うるさい」と感じるかもしれませんが、この“唸り”こそがMTらしい愛嬌であり、個人的には大好きなポイントです。 -
安心のiMT非搭載
近年のトヨタMT車は次々と「iMT(インテリジェントMT)」を搭載し、もはや純粋なMTはヤリスくらいしか残っていないのでは…と思うほどです。iMTはシフト操作やクラッチ操作に合わせて自動で回転数を調整し、エンストを防ぐ仕組み。便利といえば便利ですが、実際には「エンストしないただのAT」であり、個人的には“なんちゃってMT”と感じてしまいます。エンストの心配がなくなる代わりに、MTならではの緊張感や「自分で操作している」という感覚も希薄になります。MTに挑戦する初心者への入り口としてはアリかもしれませんが、これで「MTを運転している」と言えるのか?と考えると、筋違いというか、正直モヤっとします。
その点、MTヤリスはiMT非搭載の純粋なピュアMT。クラッチ操作からエンジン回転の合わせ方まで、すべてが自分の意思次第です。ちょっと坂道でエンスト発生!おっとっととサイドブレーキを引きつつエンジンを回して状態立て直し。時には気分次第でガンガン踏んでスポーツ走行を楽しむのもよし、逆にアクセルワークを丁寧にして燃費チャレンジに挑むのもよし。余計なお節介が一切入らないからこそ、運転そのものを味わえる一台だと感じます。
装備と内装
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Zグレードを選んだ理由と印象
このグレードにしたのは、正直に言えば営業マンに勧められたのがきっかけでした。ただ、下位グレードだと簡易的なリヤシートでヘッドレストが取り外せず、どうしてもチープに感じてしまう仕様だったので、結果的にZを選んで良かったと思っています。内装デザインは現代基準のシンプルで違和感のない仕上がり。天井まですべて黒基調となっており、意外にもスポーティーな雰囲気が演出されていました。
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7インチ液晶メーターの先進感
Zグレードではマイナーチェンジ直後の7インチモニター式メーターが採用されており、これが想像以上に未来感を与えてくれます。今ではカローラやアクア、クラウンなども同系統の液晶メーターが広く普及していますが、ヤリスはサイズの関係で1眼タイプとなっているのが特徴。テーマは3種類から選択できるので、気分で切り替える楽しみ方もできます。
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細かな快適装備と気配り
「トヨタで最も安いクラスの車」という位置づけながら、すべてのドアがオートで開閉できるパワーウィンドウや、ドアロック連動でミラーが自動的に格納される機能など、普段の使い勝手をしっかり支えてくれる装備がそろっています。さらに意外に感心したのがワイパーの挙動。オートワイパー機能こそありませんが、走行時は高速で動かしていても、停車を検知すると自動で間欠ワイパーに切り替わる仕様になっており、きめ細かな配慮を感じます。また、エンジンを切った時もワイパーが途中で止まることなく、必ず元の位置に戻ってから電源が落ちるなど、高級車並みの仕組みが盛り込まれています。これはあまり語られていませんが、個人的には大きな評価ポイントです。
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マイチェン後に変更された利点
特に今回購入したのは2024年マイチェン後のヤリス。大きく外装が変わり、フロントグリルがプラスチッキーな横バー形状のものから網目グリルのものに置き換わっていました。(その後2025年に至るにかけて他メーカーや外車かかわらずこのデザイン取り入れるようになりましたね。トレンド?)また、内装部分でも7インチメーターに置き換わったことに加え、地味ですが、全席側の天井ランプのコンソール周りがデザイン変更されていました。
気になる点
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ディスプレイオーディオの不具合
一番顕著なのはディスプレイオーディオ周りの不安定さ。接続が途切れたり再起動するのはもちろん、トヨタ純正ナビを動かしているときは音声認識がまったく反応しないこともあり、「もう少し声のトーンを挙げてお話しください」と繰り返されるのは正直ストレスでした。ほかにもアンドロイドオートが運転中に時々接続切られてナビが中断。高速の出口を折り間違えて30㎞ぐらい無駄走りをする羽目になったり。
さらに納車して半年ほど経つと、トヨタアカウントにログインしていてもエンジンを切るたびに勝手にログアウトされ、自宅登録などの情報もすべて消えてしまう始末。結果的に今は Android Autoをメイン に使っています。 -
デジタルメーターの表示遅延
Zグレード専用の7インチモニターメーターは未来感があり便利ですが、デジタル表示ゆえの弱点も。加速時にタコメーターの表示にわずかな遅延があり、0.5秒ほど遅れて数値が追随する感覚があります。タコメーターも急に「ぐばっ」と振り切る挙動で、例えるなら 30FPSのゲーム画面 を見ているかのよう。物理的な針メーターのようなリアルタイム感(140FPS並みのなめらかさ)を期待すると、やや物足りなさを感じました。 -
車中泊はできないと考えたほうがいい
シートアレンジ性は意外と制約があり、まずフロントシートが180度まで倒れません。お昼寝をするにも中途半端な角度でストップしてしまい、快適とは言いがたいです。実際に島根までの遠出で車中泊を試みた際、後部座席を倒してS字のような体勢で寝ていたところ、トランクデッキから「バギッ」と鈍い音が…。やむなく後席を戻し、後部座席に横になる形に変更しましたが、翌朝には体がバキバキで筋肉痛。まさにエコノミー症候群一歩手前のような状態になり、「やっぱりビジホを予約しておけばよかった」と痛感しました。 -
マイチェン後に機能カットされた数々
私がMTヤリスを契約したのは2023年12月末。ちょうど年末で、マイナーチェンジの詳細情報がまだ十分に出回っていない時期でした。営業マンからは「外装が網目グリルになる」「7インチメーターが追加される」といった話は聞けたものの、実際にはいくつかの装備が予告なしに削除されていたのです。 具体的には、シート位置をワンタッチで呼び出せるシートメモリー機能や、助手席の買い物アシストカバーがカタログから消滅。そして何より痛かったのがデッキボード。マイチェン前は標準装備だったのに、いつの間にかオプション扱いとなり、結果として約1万円を追加課金して購入する羽目になりました。 当時、営業マンから渡されたカタログはマイチェン前の仕様で、「シートメモリーは便利ですよ」と説明を受けたり、助手席の買い物アシスト機能も“ある前提”で話を進めていたのですが、実際には納車された車から消えていた…。ネットでもまだ断片的な情報しか出ていない時期に、先行して購入に踏み切ったタイミングの問題とはいえ、やや拍子抜けした出来事でした。 -
MTヤリス故の機能カットの数々
ヤリスといえば多くの人が思い浮かべるのは「オートマチック」や「ハイブリッド」の圧倒的な低燃費モデルでしょう。実際、世間の認知度の9割以上はそこに集中しています。 一方で、このMTヤリスはオートマ仕様をベースとしたシャーシにMTを組み合わせた構成になっているため、その設計上いくつかの制約も見えてきます。まず大きな課題がペダルレイアウト。アクセルとブレーキの間隔が広く取られており、ヒール&トゥを行おうとすると左足を90度近くひねる必要があり、足がつりそうになるほどの負担がかかります。もちろん不可能ではないものの、峠道でスポーティに攻めたい場面では「オートマ用のペダル配置」に従わざるを得ないという欠点があります。
次にメーター周りの仕様。ATやハイブリッドのヤリスでは「エコジャッジ」や燃費走行をサポートする各種機能が搭載されていますが、MTヤリスにはそれが一切ありません。おそらくCVT経由でのアクセル操作や出力配分を分析しているからこそ可能な機能で、MTではその監視が不可能(乗り手が好き勝手にエンジン吹かすので)削除されているのでしょう。
さらに、メーター背景色の変化もMTでは非対応。ハイブリッドやATモデルではエコ走行やスポーツモードの切り替えに応じて青・赤・緑と背景色が変化する演出がありますが、MTは常に青のまま。ある意味「ガソリンを惜しまず使う仕様」と割り切られているのかもしれません。
つけてよかったオプション装備
購入時の商談では、Zグレードをベースに以下のオプションを追加しました。
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ヘッドアップディスプレイ(44,000円)
速度やナビ情報をフロントガラスに直接投影してくれるHUDは、想像以上に便利な装備でした。特に夜間走行では視線移動を最小限に抑えられ、運転中も常に前方へ意識を向けたまま情報を確認できるため、安全性の向上につながります。メーターを「チラ見」する煩わしさから解放される感覚は、一度体験すると手放せません。また速度表示だけでなく、ナビの案内や「路面凍結注意」といった警告表示なども投影されるため、運転支援機能との連携という点でも効果的です。個人的には「ヤリスを新車で購入するなら必ず付けてほしい装備」と断言できるほどの満足度があります。
一方で気になる点もあります。昼間の強い日差しの下では、HUD投影ユニットが格納されているダッシュボードの枠が太陽光を反射し、フロントガラスに「がま口のような影」が映り込むことがありました。走行には支障はないものの、やや煩わしさを感じる場面もあるので、このあたりは利便性とのトレードオフといえるでしょう。
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切り替え式LEDフォグランプ(白/黄色)(70,345円)
悪天候時に黄色へ切り替えられる安心感は大きく、特に雨や霧の多い地域では頼れる装備です。見た目もスポーティになり、デザイン面の満足度も高まりました。 社外品ではヤフオクなどでL字型に光るパーツも出回っていますが、純正品のメリットは操作性と統一感。ライトのオン/オフや色の切り替えは、ウインカーレバーのノブを操作するだけで完結します。社外品にありがちな「後付け感のあるスイッチをサイドブレーキ付近に取り付ける」といった煩わしさがなく、インテリアの一体感を損なわない点が大きな利点です。なみにフォグの光量は「ひどいほど眩しい」というレベルではなく、あくまで程よい補助光。ネット上では「フォグランプをつけるのは迷惑だ」と叩かれるケースも見かけますが、トヨタ純正は過剰な明るさではなく、必要十分なバランスが取れていると感じます。
実際に購入に至った見積内容
さらにディーラーオプションでETC2.0やフロアマットを装着し、支払総額は262万円。
実際の見積書を見返すと、オプションだけで25万円以上かかっていますが、「せっかく新車で買うなら妥協したくない」という気持ちも強く、この仕様に決めました。(特にフォグランプ。プラスチックキャップで埋められるぐらいなら穴を埋めたい理論で真っ先にオプション選定することに…)
また今回の見積内容でネックになっているOSS費用。運輸省への届け出などを店舗にお任せする分5万ぐらい取られてしまう要素。ここはけちる人なら自分で書類を取りに行って手続きを済ませるなりすれば2万ぐらいまで落とすことは可能だったが、今回は実家のある地元の県での店舗で車購入となり、県をまたぐ手続きも厄介なので今回は5万で代行で処理してもらうことになった。
まとめ
- 納車から 1年5か月/11,000km走行
- MT所有は初めてだが、すっかり慣れて「作業」から「楽しみ」へ変わった
- 不満もあるが、致命的なものではなく「相棒」としての愛着が強まった
結論:ヤリスZ MTは、初めてのマイカーとして十分満足できる一台。これからも長く付き合っていきたいと思える存在です。